緑化協会会報平成28年1月

マイナンバー元年を迎えて

国民一人一人に12桁の個人番号を割り当てる「マイナンバー制度」の運用が、2016年1月から始まりました。昨年2015年10月から通知カードが、住民票の住所に簡易書留で発送されていますが、一部の地域で配達が遅れており、住民票の住所と異なる所にお住まいの場合は受取りが越年になる方もいるでしょう。本年1月4日から各自治体で個人番号カードが無料交付されます。

マイナンバー制度が適用されるのは、①税、②社会保障、③災害対策関連の3分野です。個人番号は2016年1月以降、源泉徴収票等への記載が義務づけられるため、事業者は従業員からマイナンバーを収集しなければなりません。各従業員の扶養家族やパート、学生アルバイト、住民登録している外国人労働者も対象です。各種の社会保障や福祉の手続きにも欠かせなくなります。

税と雇用保険は2016年1月から、健康保険や厚生年金保険は2017年1月から関係書類にマイナンバーを記載する必要があります。その他、国民健康保険・後期高齢者医療の手続きや児童手当・児童扶養手当の申請、介護保険の利用、失業手当や生活保護を受ける場合に必要になります。不正受給や不正還付をなくすのもマイナンバー制度の目的の一つです。また地震・風水害等で被災した時には、被災者生活再建支援金を受給する場合にもマイナンバーは使われます。

マイナンバー制度ができた背景には、2007年に発覚した5,000万件の年金記録不明問題や年金詐欺事件の反省があります。氏名、性別、生年月日だけでは個人を判別できない漢字名の「名寄せ」の難しさや申請主義の観点からマイナンバーと基礎年金番号を連携させ、年金記録情報を適切に管理運用できれば再発を防げるからです。しかし、2015年5月に起きた日本年金機構の125万件の個人情報流出問題の安全対策のため、年金関係は2017年11月30日まで延期となりました。現在、年金請求する際にはマイナンバーが記載されていない住民票を添付しなければなりません。

医療関係では、2016年1月から健康保険組合等が行う特定(メタボ)健診や予防接種の履歴情報に活用され、従業員の健康管理に生かされます。給付も施行2年以内をめどに適用される予定でしたが、昨年末に健康保険証の番号など個人情報を含む全国約10万3,000人分のリストが複数の医療機関や薬局から流出していたことが発覚しました。近畿地方や四国に集中しており、今後の調査で全国的に広がっていく可能性があります。保険証番号と共に氏名や住所等がわかると保険証が再発行できる場合があり、これを身分証明書として提示して成りすましや詐欺などに悪用される恐れがあります。本調査の進展如何によってはスケジュール通りにいかないかもしれません。

金融関係では、2016年1月から新規の証券口座や投資信託口座等の開設にマイナンバーが必要になります。2018年からは銀行等の預金口座にも適用(当面は任意)されるため、事業者の不正会計や従業員及び配偶者の副業を容易に把握することができます。マイナンバーは副業の勤務先にも届出る必要があり、これが源泉徴収票と共に税務署に送られると住民税の算定等に反映されるからです。収入がわかればおおよその労働時間も推測できます。配偶者の妻が家族に内緒でパートで働き年収が一定額を超えると、所得税や社会保険料負担が発生してしまうので注意が必要です。

2015年12月の群馬県経営者協会の調査によると、マイナンバー制度に伴うコストや業務負担に「影響があった」と答えた県内企業は95%でした。特に影響があった内容(複数回答)では「従業員からのマイナンバー取得・本人確認作業による業務負荷」が最多の85%でした。当制度に伴う費用対効果はすぐには表れませんし、自社で管理運用していくにも外部委託していくにも今後の運用スケジュールの変更によって業務負担は膨らんでいくのではないかと思われます。むやみにコストをかける前にどのような対策をすべきか、専門家に相談しながらご対応していただきたいと思います。

みくに労務管理事務所  特定社会保険労務士 渡邊孝利

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