新聞掲載記事平成27年1月

36協定について

Q. 私は会社を経営しています。先日、知人から従業員を残業させるにあたって協定を結んでいないと法違反になると聞きました。残業代は支払っていますが、協定は結んでおりません。やはり法律に違反しているのでしょうか?

結論から言えば、協定を結んでいなければ法違反となります。具体的に説明しますと、労働基準法では労働時間について「1週40時間、1日8時間」を超えて労働させてはならないと定めています(休日労働についても同様)。ただし、これでは業務が忙しいときなど時間外(あるいは休日)労働をさせたくてもさせることができません。これに対応するため、労働者の過半数で組織する労働組合があればその労働組合、先の労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを労働基準監督署に届け出た場合においては労働時間を延長し、または休日に労働させることができるとしています。この協定は労働基準法36条に規定されているので36(サブロク)協定と呼ばれています。従って36協定を締結し、労働基準監督署に届け出ていなければ時間外あるいは休日労働に対して、時間外手当や休日手当をきちんと支払ったとしても法違反になってしまいますので注意をしてください。

36協定では①時間外、休日労働をさせる必要な理由②業務の種類③時間外労働をさせる労働者の数④延長することができる時間(あるいは休日数)⑤有効期間(最長1年)を締結することになります。しかし、36協定を締結し届け出たからといって時間外労働などを無制限に行わせることができません。現在、原則として長時間労働を防止するために④の延長できる時間は1週間15時間、1ヶ月45時間、1年間360時間という限度基準(ただし1年単位の変形労働時間制の採用事業所についてはさらに厳しい基準)を設けています。よって、この基準を超えて協定することはできません。しかし、決算業務や納期が差し迫った場合など、限度基準である1ヶ月45時間以上を超えて労働させなければならない事態があらかじめ予想できるケースがあります。このような臨時的な事態に対応できるように例外として「特別条項付協定」として先の限度時間を超えて時間外労働を締結し、労働させることができるようにしています。ただ、こちらもやみくもに限度時間を超えて協定が締結できるわけではありません。長時間労働を防止するために①一時的、突発的であること②全体として1年の半分を超えないことが見込まれること(例えば、1ヶ月60時間をまで延長できる協定にした場合は1年の半分の6回までしかできないということ)の2つの規制を設けています。私自身も長時間労働が続いたあとに体調を崩したり、精神疾患にかかったりする方を数多く見てきておりますので、長時間労働をできるだけさせないことが会社を経営していく上での重要な要素の1つではないかと思っております。

みくに労務管理事務所 社会保険労務士 竹沢智弘

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