新聞掲載記事平成26年7月

70歳以上の在職老齢年金について

Q. 在職中に受給する厚生年金は何歳まで調整されますか

年金相談の際に、今でも「厚生年金保険料は65歳まで払えばいいんですね」とか、「65歳になれば在職中でも減額されないで年金はもらえるんですね」とご質問を受ける事があります。現在は70歳以上の方は厚生年金保険料の支払いは無くなりますが、70歳以降も一定の要件を満たす方には在職中の年金の停止が生じます。 改正経緯を確認すると、平成14年4月から65歳台後半の在職中の年金の調整が開始され、さらに平成19年4月からは70歳以降にも拡大されました。 調整の方法は65歳台後半と同様で支給される年金月額は次のとおりです。(老齢基礎年金と差額加算は含みません)

年金月額-(年金月額+総報酬月額相当額-46万円)÷2

平成19年4月1日改正により、70歳以上の対象となるのは、施行日以降70歳を迎える方(昭和12年4月2日以降に生まれた方)です。したがって、施行日前に70歳になっている方と施行日後に70歳になった方では取り扱いが異なります。以前はどんなに高い報酬の社長であっても70歳になれば満額の厚生年金を受給できたわけですから改正法の前と後では大違いです。これが実際に対象となる方は生年月日と合わせて以下の3つの要件を満たしている方です。

  • 昭和12年4月2日以降に生まれた方であって70歳以上の方
  • 厚生年金の適用事業所にお勤めの方であって勤務日数および勤務時間が
    ぞれぞれ一般の従業員のおおむね4分の3以上の方
  • ③ 過去に厚生年金保険の被保険者期間のある方

これらのことを年金事務所で把握するため、適用事業所の各種届出書類も増えて以下のような新たな届出義務が生じています。

  • 厚生年金保険70歳以上被用者該当届
    対象者を新たに雇用したときや、70歳前からの被保険者が70歳になっとき
  • 厚生年金保険70歳以上被用者不該当届
    対象者が退職や死亡したとき
  • 厚生年金保険70歳以上被用者 算定基礎・月額変更・賞与支払届
    通常の算定基礎・月額変更・賞与報告と同時に提出

以上の届出により、すでに厚生年金の被保険者で無くなった方でも先ほどの事例のような厚生年金の支給調整がなされるわけです。高年齢者雇用安定法により65歳までの継続雇用の義務化がされておりますが、さすがに上記に該当し70歳以降も常勤でしかも調整対象となる報酬という方は稀だと思います。届出も見落としがちになりますが、遅延すると支給されるべき年金がいつまでも支給されないなどということにもなりかねません。速やかに届出をしておくほうが良いでしょう。

みくに労務管理事務所 社会保険労務士 飯島明美

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