新聞掲載記事平成25年2月

建設業と社会保険について

Q. 先日、建設業者で社会保険未加入の事業所には厳しい罰則が課せられるという話を耳にしました。私どもの会社は社会保険に加入していないのですが、社会保険に加入しなければいけないのでしょうか?また、罰則とはどういったことがあるのでしょうか?

現在、社会保険に未加入の企業の存在が社会問題になっています。その中で建設業界は、その問題が非常に根深いと言える業界の一つです。そこで国土交通省は、昨年から社会保険未加入企業に対する具体的な対策を次々と発表しました。貴方が耳にした話は、その対策の一部かも知れません。
そもそも、加入しなければならない社会保険というのは、具体的に「医療保険(健康保険)」「厚生年金保険」「雇用保険」の3保険です。
各保険について制度や加入条件等の仕組みは異なりますので、ここでは割愛させて頂きますが、法人であれば基本的には加入しなければならず、個人事業主の方でも条件を満たしていれば法人と同様に加入しなければならないとされています。しかし、この3保険に加入していない事業所が大変多いのが現状です。
そんな中、国土交通省は建設業法施行規則を改正し、先述の通り社会保険未加入企業に対する対策を発表しました。

  • 業許可申請書の添付書類に保険加入状況の書類を追加
    建設業許可申請(更新等も含む)に許可行政庁が保険加入状況の確認・指導を行うために申請書の添付書類として提出が義務化されました。
  • 審査申請における、保険未加入企業への減点措置の厳格化
    今までの経営事項審査でも未加入業者に関しては減点の対象になっていましたが、今回の改正で未加入の場合1保険につき40点、最大120点の減点に厳格化されました。
  • 施工体制台帳及び再下請通知書の記載事項に社会保険の加入状況を追加
    元請企業による下請企業に対する社会保険加入指導の促進を図るため施工体制台帳及び再下請通知書が変更になりました。

以上は発表されたものの一部です。現時点では、仮に建設業許可申請時に社会保険に未加入の場合であっても許可自体は認められますし、経営事項審査申請についても申請自体は受理されます。ただし、許可行政庁や保険担当部局等からの社会保険加入指導や指示処分に従わなかった場合は、3日以上の営業停止処分が課せられることになっていますし、今後も、元請企業から社会保険未加入の下請企業に対する発注の減少や行政省庁による罰則の強化も十分予想されます。経営上の厳しい競争の中で大変頭の痛い問題ではあると思いますが、前向きにご検討していただければと思います。
また、社会保険等の制度や仕組みについては、お近くの社会保険労務士にご相談頂く事をお勧めいたします。

みくに労務管理事務所 行政書士 奈良 諭志

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