新聞掲載記事平成24年5月

定年退職後の健康保険について

Q. この度、会社を定年退職することになりました。今後、健康保険はどうするといいでしょうか?

一般的には60歳の定年退職で退職する人や標準報酬月額が28万円以上の人は、国民健康保険より保険料が安い「任意継続被保険者」を選択し、退職後20日以内に、それまで加入していた全国健康保険協会か健康保険組合に申請したほうが有利になると思われます。ただし国民健康保険料はお住まいの市区町村でかなり違うため、それ以外の人と同様に各市区町村に国民健康保険料を問い合わせた額と、任意継続被保険者の額(退職時の保険料の2倍か一定額〈協会健保、健康保険組合が決める〉のいずれか低い方)を比べて決めることをお勧めします。
なお、解雇等による失業者には平成22年度より、一定の楊軒全てに該当すれば、離職日の翌日からその翌年度末までの間、前年の給与所得を100分の30とみなして保険料を計算するので、任意継続被保険者より保険料が低くなる場合もあります。ここで少し、任意継続被保険者について説明します。継続した2ヶ月以上の被保険者期間を有し、資格喪失後20日以内に届け出をすると2年間に限り、任意継続被保険者として今までの健康保険を継続することができます。この20日以内の期限は天災などの正当な理由がない限り受け付けてもらえませんので注意が必要です。次に保険料についてですが、退職時の標準報酬月額に自分の住んでいる都道府県の保険料率(40歳以上65歳未満の方は、介護保険料率が含まれます)を乗じた額が保険料となります。ただし、保険料の上限があり、標準報酬月額が28万円を超える場合はの標準報酬月額に基づいた保険料となります。また、在職中は事業所とご本人で保険料を半分ずつ折半していましたが、退職後(資格喪失後)は全額ご本人負担となります。なお、保険料は、原則2年間変わる事がありません。
以上のように保険料は被保険者の報酬額、健康保険組合かけんぽ協会かによってもどちらが安くなるかは変わってきます。ただし、給付という観点からは、任意継続保険者をお勧めいたします。その理由は、保険者が変わると月の途中であっても、高額療養費の計算単位である診療報酬明細書(レセプト)が分割されてしまうからです。つまり、任意継続被保険者を選択した場合、被保険者の記号と伴剛は変わりますが、加入する保険者が変わらないため、任意継続被保険者への切り替えが月の途中であっても、作成されるレセプトは1件となり、給付金はヘル事がありません。一方、国民健康保険に加入した場合、請求先が変更になるため、レセプトは資格の切り替え日の前までと、それ以降の2件となり、レセプトの請求先である保険者が異なるため、事務処理上分割せざるをえません。
よって月の途中で国民健康保険を選択した場合、高額療養費が支払われず、ご本人の負担が大きくなることもありえます。

みくに労務管理事務所 社会保険労務士 古川

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