新聞掲載記事平成24年4月

新入社員への給与(の仕組み)説明について

Q. 私の会社は毎年新卒採用をしており、今年も4月から新入社員を5名雇いました。最初の給与を支払うと、控除額の多さに驚かれるのですが、従業員にわかるように説明できません。うまく伝える方法を教えてもらえるでしょうか?

契約の際に提示された給与は額面で、手取り額と異なるのは当然ですが、実際に最初の給与をもらってみると控除額の多さに驚く人も多いでしょう。
給与から控除されるお金は大きく分けて2つあります。
①健康保険や所得税など、社会保険料や税金を国や自治体にかわって会社が控除するもの。
②旅行積立や社内預金など、労使協定によって控除するもの。
②の控除の方は金額がそれほど大きくなく、目的も項目名を見ればわかりやすいものが多いので、今回は①の方を詳しく見て行きましょう。
まずは金額がどのくらいになるか試算してみます。おおよその金額になりますが、新卒で22歳、給与の総支給額20万円の人の場合、厚生年金保険料が16,412円、健康保険料が群馬県で9,950円、雇用保険料が1,000円、課税所得や扶養の人数によりますが所得税が約3,700円かかります。これらを合計すると3万円程度が給与から控除されることになります。さらに入社2年目の6月からは住民税がかかります。合計すると額面が20万円であっても手取り額は17万円程度になってしまいます。これだけの金額を控除されると、制度を理解している人でも随分引かれるなと感じるでしょう。
②の社内規定による控除と違い、これらは個人が支払う義務があるものを、会社が給与から控除して支払っています。しかも、社会保険は会社が保険料の半分を負担し倍の額を納めています。そもそも、健康保険は自分や家族が病気やケガをした時のため、厚生年金は老後の生活資金のため、雇用保険は万が一失業してしまった時のため、どれも労働者本人のために加入しているものです。もし会社が社会保険や雇用保険に加入していなかったら、国保税と国民年金を自分で納めなくてはなりませんし、失業しても手当を受けることができません。しかし、ただ給与明細を渡すだけでは、会社に取られているように感じてしまいかねません。
労使間の信頼関係を築くためにも、最初の給与を渡す前に制度の説明を簡単にするといいでしょう。

みくに労務管理事務所 社会保険労務士 古川

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